もたはんの仕事【水通し】
今日は子どもの日。
という事はもうすぐGWも終わりです。
今年のGW、どのへんがゴールデンだったかはさておき
終わってみればあっという間です。
もたはんは休業する事なく、いつも通り営業しておりました。
その間やることも一杯で何気に忙しい毎日でした。
仕事も忙しいですが、人間生きていれば生活するだけで忙しいものです。
GW中、仕事だった人も、お休みだった人もお疲れ様でした。
GW中に、もたはんがしていた仕事の一つは
遠州木綿の水通しです。
水通しってなんでするのか?
きものきぶんに使う生地で綿100%。
水通しをせずにお仕立てしてしまうと
ご自宅でお洗濯する際に大きく縮んでしまうため
わざと生地を縮めるためのこの工程が大切です。
実はこの水通し。
専門でやってくれる所がほぼありません。
少なくとも福井では知りません。
湯のしや湯通しをしてくれる所が
「やりますよ〜」と言ってやってくれるのですが
水を通した後に、テンターという幅出し機にかけてしまいます。
テンターにかけてしまうと、せっかく縮ませた生地がまた伸びてしまい
お洗濯の際の縮みの原因になってしまうのです。
それで、テンターにかけないでとお願いするのですが
それがまた大変なのでなかなか受けてもらえません。
僕たちも自分たちが納得のいく形で水通しをして
着物に仕立てたいと思うので
木綿着物や浴衣の水通しは自分たちでする事が多いです。
水通しの方法は?
そんな水通しはどんなことをするかと言うと
やり方はいたってシンプル。
まず、生地を水に浸します。
この時、押さえつけたり、沈めたりせず
ゆっくり水を浸透させます。
染色の職人さんに聞いたところ
急に早く水を浸透させようとすると
糸の表面に空気の膜ができてしまい
それ以上水が浸透しなくなってしまいます。
なので、ゆっくり時間をかけて糸1本1本に水を浸透させるため
一昼夜、ほぼ24時間かけて水通しを行います。
最初は空気を含んで浮いている生地も
徐々に沈んでいきます。
そうして水通しした生地を
今度は脱水します。
シワにならないよう短時間で3分ほど。
脱水後、生地を干します。
干す時も、室内で干します。
日で焼けたりしないようにするためです。
遠州木綿は、とても速乾性に優れた風を通す生地なので
半日ほどでしっかり乾きました。
生地によって、水の浸透スピードも乾く時間も違いますが
遠州木綿はそのどちらも早いと言えます。
そこから最後、乾いた生地を巻いていきます。
これも機械を使わず手巻きしていきます。
今回は通常の反物の倍、20m以上の長さなので
呉服屋筋(反物を巻く際に使う特殊な筋肉)が鍛えられます(笑)
そうして、水通しが終わった生地を
きものきぶんを仕立ててくれるラポージェさんに送ります。
あとの事は宜しくお願いします!
水通しと漬物作り。
個人的には、水通しの工程は
祖母の作る漬物に似ているなと思います。
いつも当たり前のように美味しく食べている漬物。
この作り方を聞くと
春から作り始めて、秋にやっと出来上がるような
途方もない下ごしらえが見えないところにあります。
春に山菜などを取りにいき
夏に採れた野菜を足し
漬け込んで秋に出来上がる漬物。
でも、祖母は「大変大変」と言いながら
呼吸するようにゆっくりと時間をかけて作る。
食べる時は一瞬。作るのに半年。
どんなに食べたくても、早く作りたくても
焦らず、ゆっくりと時間をかけ丁寧に作る。
そこには僕たち孫の顔があるのかもしれません。
あると嬉しいです。
水通しも、どんなに早くたくさんやりたくても
ゆっくり時間をかけてやる事で
後々その時間の意味が出てくる。
もちろん、水通し自体は2日ほどの作業です。
ただ水通しを自分達でする事で
あの人がこれを着るんだな〜と顔を思い浮かべる時間が生まれます。
もちろん僕たちが着物を売る事は
経済活動の一部なのですが
水通しはそれを一瞬忘れて生活しているような気持ちになります。
これはきっと着物が生活着だった頃は
着る人たちが自分でやっていた事で
生地の下ごしらえの大事さを身をもって知っていました。
それは母親から代々受け継がれてきたやり方かもしれません。
そんな生活の匂いが
水通しからは感じられます。
生地を干している時に微かに香る染料の匂いも
職人さんが染めている様子を思い起こさせます。
晴れの日の多かったゴールデンウィーク。
おかげさまで水通しも順調に進みました。
ここから、きものきぶんを作っていきますね。