【もたはんの今日も営業日和。】第1話「水曜に休むのは魚屋と一緒なの?」
福井県福井市のあるところに
もたはんと言う一回聞いただけでは
覚えにくい名前の呉服屋さんがあります。
そこは家族4人で営んでいる
どんな時でもお店を開けているお店です。
そう。今日もきっと営業していることでしょう。
さあ、今日はどんなお客さんがやってくるでしょう。
水曜日に休むのは魚屋!?
朝8時半。
店が開店するまであと1時間半もあります。
そんな時「ピンポーン」と店ではなく自宅のチャイムがなりました。
何かの配達があるには早い時間です。
玄関に出ると見覚えのおじいちゃん。
「おめぇんとこ水曜日休みにしたんか?魚屋と一緒やげ〜」
と、使い慣れた福井弁を巧みに使いこなしています。
話を聞いていると、どうやら昨日来たのに休みだったのが
少し不服だったようです。
80過ぎで自転車を乗りこなすおじいちゃんですが
何回も来るのは体力的にも大変そうです。
いきなり怒涛の福井弁だったので面食らったものの
「水曜に休むのが魚屋と一緒なんて初めて知った」
と妙に関心してしまいました。
そこでせっかく来てもらったものを
また追い返すのは申し訳なく思い
少し早いけど店を開ける事にした。
「開けますからお店の方に回って下さい」
現役の普段着和服男子
そのおじいちゃんこと境さん(仮名)は
80歳を超えてなお、移動のほとんどは自転車。
いつも甚兵衛を着て、足下は下駄というスタイルを貫いていて
少し憧れを抱いてしまう生粋の普段着和服男子。
それで、用がなんだったかというと
「雪駄が欲しい」らしい。
なんでも、いつも下駄でいたら、同居する息子さんに
「下駄は転けやすくて危ないから雪駄を履いて」と釘を刺されたらしい。
もたはんも田舎の呉服屋ながら雪駄は揃っている方。
完全に普段履きなら、昔からあるようなラバー底の雪駄がいいだろうと
おすすめするも却下。底が薄すぎるのが嫌らしい。
意外とこだわりがある。
そこで、お値段は少しするものの丈夫で長く履いてもらえる
菱屋さんのカレンブロッソの雪駄をおすすめ。
グレイの台に、シマウマ柄の鼻緒をすげた雪駄をお見せした。
すると「これいいな」とあっさり決めてしまった。
自転車に跨がり、
カレンブロッソの雪駄を履き、
近所を縦横無尽に動き回る80歳。
ますますかっこいい。
お代金を頂戴し、また愛車に跨って颯爽と去っていく背中は
「ありがとな。次は水曜日あけとけよ」と物語っているようだった。
ただ、そんな簡単に定休日変えられないのです。ごめんなさい。
水に「商売が流れされる」から
あとあと調べてみると
全国的に魚市場が休みなのが水曜日で
そのため魚屋は水曜日が休みの所が多いようです。
もたはんも元々は日曜日のみ定休日だったのを(しかも第1、第3日曜のみ)
四代目が一緒に働くようになってから水曜定休に。
理由は週の中日だからと単純な理由でした。
ただ、水曜日休みのお店も多く、その理由は調べると
「商売が水に流れる」「お金が流れて消える」など
「水」を避けて休むという験担ぎの一つでもあるそうです。
もたはんは単なる結果オーライでした。
コロナ禍に揺れに揺れる日本。
それでもお客さんは日々やってきて下さり
いろんな気づきを与えてくれます。
さて、次はどんなお客様が来て下さるでしょう。